KNOWLEDGEステッキの知識
ステッキの正しい持ち方や、ステッキの長さ、素材についての説明
ステッキの寸法
ステッキは必ず、きき腕で表面を前方へ向けて持ちます。表面を裏側にして突いた場合、力が入らず突きにくくなります。但しお年寄りで腰の曲がった方の場合はむしろ裏側にした方が突きやすくなります。ステッキはあくまでも身体のバランスを保つためのものですから(足を痛めたときによりかかる場合を除き)ステッキを軽く地面に突くようにして歩いてください。
長過ぎる場合には寸法は簡単につめることができます。最も適した寸法はステッキを一度使用していただくと一番つき良い寸法がわかります。あまり短すぎると身体が前のめりになり又長過ぎても扱いにくいものですからご注意ください。おおよその寸法の出し方については図A、Bを標準にしております。
A.うでを楽に下げてステッキを前に出した場合足から石突きまで間隔が約30cmぐらいにあくのが最適です。
B.身長を2で割って、その長さに3cmプラスした長さが標準的な長さです。
以上がおおよその寸法ですが、握り部分、ステッキの太さにより多少の違いがでてきますので、実際に使っていくうちに最も使い良い寸法がわかります。
使用上のご注意
- ステッキは医療用具でありません。ファッション性を重視したおしゃれ歩行用具です。リハビリ等体重をかけてのご使用や、横からの強い力がかかった時は破損することがあります。
- ご使用前に各部を点検して下さい。(接続部分にゆるみ等の異常がある時は使用を中止して下さい。)
- ステッキ先端のゴムは早めに交換して下さい。すり減ったゴムは滑りやすく大変危険です。
- 段差の上り下り(階段、車の乗降等)滑りやすい道(坂道、雨の日、砂利道、排水口、工事現場等)でのご使用は特にご注意ください。
- 普通の用途以外(登山用、護身用等)には使用しないで下さい。
- 折りたたみの操作の際は指を挟んだり、ステッキがはねたりしないように注意してご操作下さい。
- 折りたたみステッキは、ご旅行時に持ち運びが便利な携帯用ステッキですが、構造上、横からの力には弱いので、十分ご注意下さい。ご使用の際は、接続部分をしっかり締めてからご使用下さい。
- カーボンステッキはパイプ状ですので、自動ドア(タクシー等)や回転ドアに誤って挟まれる等横方向から強い力がかかると破損することがあるので、ご注意下さい。
ステッキに使用する素材
大別してステッキに利用する木材は国内産と輸入材に分けられます。国内産は文字通り、九州、四国、本州、北海道に生息している樹木で、通称和材と呼ばれています。戦前は中国を経て輸入されていたもので、インド、タイ、ビルマ、マレーシヤ、フィリピン等に生育し、銘木といわれているものを唐木(カラキ)材、ボルネオ、ジャワ、スマトラ等インドネシヤ諸島の赤道直下の熱帯地方に生育しているものを南洋材、南米のアマゾン流域、アルゼンチン北部等熱帯雨林で自生しているものを南米材と呼びます。
- 和材針葉樹は概して柔らかく、ステッキにする場合は細身に切削するので弱く不向きであるため、ほとんど広葉樹木材を使用しています。樫、桜、楓、椿、根竹、桑、イスノキ、欅、つげ等
- 唐木材紫檀(したん)、黒檀(こくたん)、鉄刀木(たがやさん)、紅木紫檀(こうきしたん)、白檀(びゃくだん)、チーク、ビンロー樹、朱呂竹(しゅろちく)、花梨(かりん)、ローズ紫檀等
- 南洋材大民籐(だいみんとう)、籐
- 南米材スネークウッド、パウサント、ジャガランダ(ブラジリアンローズウッド)、ビオレタ(キングウッド)
- 欧州材ヒッコリー、チェストナット(栗)、ビーチ(ブナ)、メイプルウッド(楓)、アッシュ(トネリコ)
- 化学繊維(カーボン)、金属(アルミニューム)材ゴルフクラブのシャフトに使用されている。カーボン製のパイプやアルミニウムパイプで作製。
*唐木材、南米材は心材を使用し、和材は心材をあまり使用しません。
スネークウッド
クワ科に属し、主として南米アマゾン川流域の高温湿地帯に自生しています。樹高は25m、直径60㎝、枝の広がり12~15m以下の現地では比較的小型の樹木です。
ステッキ用材としては、直径30~40㎝のその心材の部分で濃褐色(コーヒー色)の材で、かつ、その心材の外側部分の4~5㎝位のところに特有の黒い斑点を有し、この斑点がアルファベットの文字、もしくはヒョウの斑点に似ていることから、別名レターウッド、レオパードウッドとも呼ばれています。イギリス人探検家により、ヘビの縞模様に似ていることから『スネークウッド』と名付けられ、この名称が全世界に広まりました。
この斑点はすべての心材にあるわけではなく、非常に不規則で、途中で消えたり全く無かったりで、完全な揃った斑点のある材料は数百本の中に4~5本しか取れず、その模様も千差万別同一のものはありません。このため、ステッキ愛好家にとって斑点の揃って明瞭に出ているものは垂涎の的になっており、重厚にして気品のあふれるステッキの最高級品と評されます。
材質は非常に硬く細身でも曲がらず頑丈なのが特徴。重量はステッキの中でも重い部類に属し、しっかりとした存在感があります。
超硬質のため、握り部分の曲げ加工は非常に難しく、曲げにあたっては慎重、細心の注意が払われますが、しばしば破断して製品にならない場合も多く、職人の技術が問われる難しい素材でもあります。
根竹(ねちく)
竹は日本国産で、各地で生育していますが、ステッキに使用する竹は主として近畿、九州で生育しているマダケ、ホテイ竹、モウソウ竹、寒竹等の地下茎を掘り出して作製します。
地表に伸びた稈材は特別な場合(例えばテレビの水戸黄門の杖)以外は利用しない。地下茎は節間隔が短く、十分に乾燥させて曲げることが容易。このため竹ステッキと言えば曲り握りの製品が殆どです。天然物であるため、その節の状態や形状でそれぞれ異なり、同一製品はできない。握り部分から石突部まで等間隔に節が揃い太さも順次細くなっている形の良いものは非常に稀で、希少価値が高く、価格は問わないからという愛好家がいるほど。100万以上の値がつく品物は現存していません。
材料の採取時期は、1~2月の極寒の満月の夜に採取したものが良いと言われています。これは竹の虫害や腐朽菌害を避けるためと思われます。マダケ、ホテイ竹の根は節が非常にきれいで硬く、ハチクの根は節間が短いのですが、材料が柔らかくしなります。
握り部分の曲げは、トーチランプ等で熱を加えて曲げますが、高級品は節と節の空間に砂を詰めて曲がり部分がつぶれないように慎重に曲げていきます。ステッキに仕上げて節の数が28~30以上あり太さも充分で石突き部に向かってほっそりとテーパーがついているものが最高級品とされています。
戦前は素状の良い根竹を作るため、暴風や地震等のあとで崖や崩れた跡に根を見つけて、その根に石などの重しをぶら下げてまっすぐ下に伸びるのを待って採取し、高級品を作ったそうです。
竹に花が咲くと枯れると聞いているが、第二次世界大戦後の一時期、全国的に花が咲いて根竹ステッキが作れない時期もあったそうです。
大民籐(ダイミントウ)
ヤシ科の属するつる性の植物で南洋諸島に自生するとう類です。とうは他の樹木に巻きついたり、樹間を伸びたりして下図のように節を作りながら成長し、全長100mに達するものもあります。
外皮は硬いほうろう質に覆われて滑らかで、内部は比較的柔らかく靭性に富んで、曲げても折れず、軽くて非常に丈夫です。
特にステッキに使用する籐は、現地でスマンブと呼ばれているもので、籐椅子や家具等に使用する籐とは外見上も全く異なります。
スマンブの節間隔は短いもので40~50㎝、普通は70~80cm位の間隔で生長するので、曲りステッキに作製するときは、下図のように下半分位の外皮を削って一本のように作製し、半皮籐として販売されます。
ごく稀に節間隔110~120cm以上の長いものが採取されるが、これを曲げて總皮付き大民籐として貴重で高額な商品となります。
握り部分の曲げについても、ふつうの竹や木材と異なり、熱や煮沸しただけでは表皮の硬いほうろう質のためしわができて製品にはなりません。種種の薬品処理を施したのちに曲げるが、企業秘密となっており、世界でも皮付き籐を曲げられる工場は少ないのです。
業界では籐家具の籐と区別するため、ステッキは大民籐と呼び、家具用はシャム籐、灰籐、みづ籐、皮むき籐等と呼んでいます。
黒檀(こくたん) Ebony
カキノキ科に属し、主として東南アジア、インド、スリランカ、タイ、フィリピン、インドネシヤに分布し、この属の樹種を黒檀と総称します。これを更に区分して心材漆黒色のものを本黒檀(マグロ)-インド産、心材黒色を基調として桃褐色などの縞を有するものを縞黒檀(シマコクタン)-ビルマ・フィリピン産、緑色の縞を有するものを青黒檀(アオコクタン)-タイ産、また、黒色と灰色の縞模様があるものを班入黒檀(ハンイリコクタン)と呼びます。
東南アジア諸島の海岸の背後林や河岸林からインド、ビルマなどでは標高1500m、ヒマラヤでは500m程度のところまで生育し、石灰質土壌において成長良好です。
樹木は常緑、または落葉の小・中径木で灌木程度のものから樹高30mくらいのものまであり、成長は最も遅い部類に属し、ヒマラヤでは16年間の年平均周囲長の成長は0.4cm、速いもので0.8cmであるといわれています。
肌目は極めて精で均斉、磨けば鏡のような光沢があります。木理は通直、時には浅く交錯しています。香はありません。非常に重硬な材で、比重は0.8~1.1くらいで、加工は困難ですが、仕上がりは良好です。
木目や節があるので、木目や節に沿ってヒビが入ることがあり、経年によって折れやすくなります。
紫檀(したん) RED SANDALWOOD
日本において、古来からシタンと呼ばれ、唐木(カラキ)の銘木として珍重されているもので、マメ科に属し、本紫檀、紅木(コーキ)紫檀、手違い紫檀、ハマ紫檀と呼ばれて多くの種類があります。
樹木は落葉性の大木で樹高40m、周囲長6m、枝下20mに達するものもありますが、成長は遅く、直径70cmとなるのに100年以上を要すると言われている。通常、周囲長1.8m以上のものが伐採されています。
ステッキに使用される心材は赤味を帯び濃紫色ないしは暗紫色に黒紫色の縦縞があり、バラの香があります。肌目は精でむしろ不均斉、木理は深く交錯し、非常に緻密で光沢があり優美です。
比重は重い材に属し、0.8~1.1で非常に堅牢です。
木目や節があるので、木目や節に沿ってヒビが入ることがあり、経年によって折れやすくなります。
タガヤサン(鉄刀木) TAGAYASAN
マメ科に属し、木材の中では最も硬いと言われ、いわゆる鉄木(IRON WOOD)の一種として珍重されています。
主としてビルマ、タイを中心に野生し、一般に湿潤な低地を好み生育する。樹木の大きさは中径木で樹高15~20m、直径50~60cmで森林では中層木を形成します。
心材の色調は濃褐色ないし、ほとんど黒色で淡色縞模様を有し、一見して判別できる素材です。これを本タガヤサンと称し、紫色の縞模様を有する材を紫タガヤサンと呼んでいます。
非常に重硬で、比重は0.8~1.1くらい、加工後の仕上がりは美しい色調です。
節がないので、ヒビは入りにくい。経年によって折れやすくなります。
Q&A
- Q初めてステッキを購入するのですが、どのステッキを選べばいいですか?
- A初めてお使いになる方、不慣れな方には、安全性の高い一本もののステッキをお勧めしております。
- Q喜寿(米寿)のお祝い等にステッキを贈りたいのですが?
- Aお祝いの品として贈られる場合、天然の木目の美しい唐木類(黒檀、紫檀等)や大民籐、根竹などが人気がございます。お名前を入れることで、記念の品として贈り先の方にも喜ばれております。
- Qステッキにはどのような種類がありますか?
- A一本もの…折り畳むことや長さを一時的に調整することはできません。
- 折り畳み式…棒内部のゴムロープやワイヤー等で折り畳むことができます。
- 調整式(スライド式)…棒をスライドさせて長さ調整がその場でできます。
- Qステッキの材質にはどのようなものがありますか?
- A大まかには木製、カーボン製、アルミ製などがございます。また、握り部分には、棒部分と異なる素材(金銀、水牛・象牙、プラスティック等)が使用されることがございます。詳しくは「ステッキガイド」、「カタログ」をご覧ください。
- Qステッキの持ち方について
- Aステッキの握りの形状には、一般的に、L字型、T字型、曲り型、ストレート型がございます。いづれも握り部分の端を持たずに、棒の真上部分を持つようにします。
- L字型…手のひらにあたる部分が平らで握りやすい。人差し指を棒に添えるように握ります。
- T字型…棒が握り部分の中央にあるので、力を入れやすい。中指と薬指の間に棒を挟むように握ります。
- 曲り型…握り部分が丸いので、力は入れにくい。人差し指を棒に添えるように握ります。
- ストレート型…掌でつかむように握ります。
- Q紳士用と婦人用があるものがありますが、違いはなんですか?
- A握り部分の大きさ、棒の太さが異なります。紳士用に比べて婦人用は握り部分が20mm位、棒の直径が2mmほど小さくできています。男女兼用でお使いいただけるものもございます。
- Q購入したステッキを修理してもらえますか?
- Aもちろん、修理いたします。ご依頼の多い修理については以下のとおりです。
- ステッキに傷がついた場合…
木製のステッキでしたら、削り直しをして新たに塗装をすることができますが、カーボン製品、アルミニウム製品はできないので、交換となります。 - 棒が折れた場合…
折れた箇所によって修理内容が異なります。棒そのものが折れた場合は棒の交換となります。握り部分とのつなぎ目で折れた場合は握り部分又は棒のいずれかの交換となります。 - 握り部分が割れた場合…
木製の表面の傷は削り直しができますが、裂けたり、ひびが入ったりした場合は握り部分の交換となります。 - 石突のゴムが減った場合…
交換いたします。
- ステッキに傷がついた場合…
- Q海外で購入したステッキの修理はできますか?
- A他店でご購入のステッキの修理をご希望の場合はご相談ください。
- Qステッキのお手入れ方法について
- A使用後は乾いた布等で軽く拭いて埃や水分を取り除きます。風通しの良い乾燥した場所に保管します。